海外建築研修inシンガポール
学部4年生(5名)と大学院生(2名)とともに、シンガポールまで3泊4日(2023.10.13-16)の海外研修に出かけました。
3泊4日とはいえ、初日と最終日は羽田経由小松までの大移動のため、ほぼ正味2日の弾丸トラベル。
陸海空、あらゆる乗り物を駆使して、シンガポールを端から端まで。さらに宿泊先もWOHA設計のホテル。寝るのも研修の一環でした。
今後の参考までに、航空券とホテル代が193,000円/人。AIG保険(4,400円)。その他、現地でチャーターした車(運転手付き)代、地下鉄代、レンタサイクル代、渡し舟代、食事代、入場料(各自)など諸々。あまり高価な土産物を買っていなければ、上記に加えて、最低でも約4~5万円くらいかかっていると思います。(パスポートを新規取得された方は、その手数料も。)アフターコロナは航空券代がそこまで安くならないことや、無駄なくシンガポールまで当日中に乗り継げる安心安全の翼、ANAのフライトであること。小松から羽田までの国内線往復分を考慮すれば、コロナ前の感覚からすると高額ですが、特段割高の航空券ではなかったと思います。
ただ、宿は中心部にあり、トロピカルな緑が生い茂る、洒落乙高層ホテルに泊まったため安宿ではなく、そこは研修の一環と言いながら、ちょっと豪華仕様だったかもしれません。そのおかげか、とても光栄なことに皆が知る著名建築家にも宿でお会いすることができ、学生にとって良い思い出になったようです(むしろ一番の思い出という人が多かった…)。
今回は、参加募集の案内を流してから2時間もしないで、7人の枠が埋まりました。引率が私ひとりだったこともあり、車一台に乗れる人数、今回は少ない人数での募集となってしまいました。即決が難しかったこともあると思います。参加を検討しながら叶わなかった方はごめんなさい。
またもし機会があれば、ぜひ参加表明いただけると嬉しいです。
各日、弾丸で見て回った見学先は、ページ右側のリスト(携帯の方は、スクロールしてページ最下部)をご覧ください。
行き先は、事前に集まり、皆で意見を出し合いながら決めました。東南アジアの伝統的な村(カンポン)の形式が奇跡的に残る「Kampong Lorong Buangkok」や、島内全体に手つかずの自然が残る「Pulau Ubin(ウビン島)」など、スター建築家たちが手掛けた話題の近現代建築だけでなく、国際都市・シンガポールの急速な開発の波の中でも、伝統的な東南アジアらしさが残るスポットにも足を運びました。
また、滞在中にヒンドゥー教の祭り「ディパバリ・セレブレーション」と、華僑の間で信仰されている九皇爺の誕生祭が行われていました。せっかくのタイミングなので、電飾が煌びやかに光り、色鮮やかな出店などが並ぶリトルインディアを散策したほか、道教寺院「Tou Mu Kung Temple」にも立ち寄りました。普段とは違う賑わいを見せており、日本の寺や神社では見たことのないような、華僑やヒンドゥー教の文化・風習を肌で感じることができました。
研修は腹ごしらえから。ホーカーセンターでは、各々が食べたいものを購入。
もちろん話題の最新作を含め、シンガポールに林立するスター建築家による建築作品の数々も見学しました。
Jewel Changi Airport(設計:モシェ・サフディ)
CapitaGreen(設計:伊東豊雄)
CapitaSpring(設計:BIG)
PARKROYAL COLLECTION Pickering(設計:WOHA)
People's Park Complex(DPアーキテクツ)
Pinnacle@Duxton
VivoCity(設計:伊東豊雄)
Marina Bay Sands Singapore(設計:モシェ・サフディ)
Gardens by the Bay
Learning Hub(設計:トーマス・ヘザウィック)
Gaia(設計:伊東豊雄)
すべてを効率的に見て回るため、車を借りて向かった南洋理工大学では、伊東豊雄の最新作で東南アジア最大級の木造建築と言われる「GAIA」やヘザウィック・スタジオが手掛けた「Learning Hub」をじっくりと見学。意外とキャンパス内の高低差が激しく、暑い気温の中、階段と坂道と格闘しながら丹下健三が設計した校舎を探したりと、広大なキャンパス内を各自散策しました。
市街地には、バイオフィリックな超高層ビルがたくさん。竹内先生もプロジェクトに関わった「CapitaGreen」、そして同じ開発会社によるオフィスビルでBIGが手掛けた最新作「CapitaSpring」、投宿先と同じくWOHAによる設計のホテル建築「PARKROYAL COLLECTION Pickering」などを見ながら、東南アジア特有のショップハウスが続くエリアを散策したほか、「People's Park Complex」などを見学。大胆にショッピングセンターの上に集合住宅の巨大ボリュームがのり、近代的なインフラストラクチャーによって支えられた機能混交と立体的なアトリウム空間が魅力的な建築。都市の未来が描かれていた1973年の再開発事業。最新作だけでなく、近代的アジア都市建築の原型とも言うべき、巨大複合施設にも立ち寄りました。
アジア文明博物館やシンガポール国立博物館も、時間をかけて見学しました。展示品をみながら東南アジアとシンガポールの歴史、そして歴史叙述の在り方を解説。日本人として知っておくべき負の歴史も触れました。
マリーナエリアでは、やや高い入場料でしたが、涼しい温室「ガーデン・バイ・ザ・ベイ」、統合型リゾート(IR)施設「マリーナベイ・サンズ」を見学。賑わうフードコートでの昼食後の自由時間を利用して、カジノで旅行代金を取り返した学生がいたとかいないとか。
さらに、今回散策した東南アジアの伝統的なカンポンが残る「Kampong Lorong Buangkok」から超高層公営集合住宅「Pinnacle@Duxton」まで、僅か50年。平屋と超高層の集合住宅という対極的な事例を通して、過密都市・シンガポールの住宅事情の激変ぶりを見てきました。
また滞在中、様々な食文化に触れました。
初日の晩御飯は、小籠包が有名な台湾の「鼎泰豊(ディンタイフォン)」でしたが、2日目は、シンガポールの名物料理「ペーパーチキン」の名店「ヒルマン・レストラン」にも行きました。看板メニューだけあって美味でした。何度か屋外にあるシンガポールの台所・ホーカーセンターで胃袋を満たしましたが、特に、空港のさらに東側にあるチャンギビレッジの大型ホーカーセンターでは、観光客がほぼいないアウェーな雰囲気の中、地元住民に混ざってチキンライスや各種ヌードル、サテー(焼鳥)など、ローカルフードを存分に味わいました。
2日目には、渡し舟に乗って、シンガポールとマレーシアの国境付近にあるウビン島にも上陸し、レンタサイクルを借りて島内の密林地帯に張り巡らされた遊歩道を各自散策。サルや蝉の糞やら小便が直撃した人もいたようですが、それもシンガポール。復路は渡し舟をチャーターし、水上にある養殖施設をぐるりと周遊しました。
少人数だったこともあり、コミュニケーションを蜜にとれたことは幸いなことで、とても親睦が深まりました。特に4年生にとっては、2つ上の大学院生との交流は新鮮だったようで、自分たちにはまだない独自の価値観をもって建築を見たり、話す姿に、良い刺激を受けたようです。
また現地では、LINEを使った情報伝達が重宝しました。誰かが再集合場所に落としてくれたピン情報が若干車から離れていたところ、律儀にほぼ全員がGPSの示すピンの場所に集まっていた時には、さすがにスマホの情報発信力に負けた気もましたが、そこは時代はインターネット。そのくらい確実?に情報が伝わるツール。
短い滞在でしたが、日本で見たことのない果物を買って食べたり、ものひとつ買うのも言葉と要領が異なるだけに、そこは大学生にとって久々となる初めての度胸試し。あっという間にリトルインディアの怪しげな出店で民族衣装を購入するようになっていましたが、建築を体験するだけでなく、各々にとって収穫と気付きが得られた海外研修になったようです。
勝原