『丹下健三と隈研吾展 東京大会の建築家たち』展inパリ
前職で携わった丹下健三展(東京会場)がバージョンアップして『KENZÔ TANGE – KENGO KUMA Architectes des Jeux de Tokyo(邦訳:丹下健三と隈研吾展 東京大会の建築家たち)』展となり、フランス・パリ日本文化会館に上陸しました。
今回の展覧会には図面はなく、あえて写真と模型に絞った展示。
丹下健三の国立代々木競技場と隈研吾の国立競技場。そして、丹下作品を撮影した写真家・石元泰博と隈作品を撮影した写真家・瀧本幹也。丹下・隈、建築家の二人が影響を受けた桂離宮。二人が世界の窓口として事務所を構え、文化的影響を受けた都市、フランス・パリ。
大型模型や二人の写真家による写真を中心に据えて、オリンピックのレガシー建築を生み出した二人の建築家、彼らの共通項を行き来しながら丹下、隈両氏の美意識に迫るという展示です。キュレーターは、丹下研究の第一人者、豊川斎赫(千葉大学准教授)。
石元泰博と瀧本幹也の美しい写真作品が並ぶ導入部。設営時には、瀧本氏が1点1点ライティングを調整したそうです。
国立代々木競技場と国立競技場の二つの競技場を収めた東京の大型模型は、ZOUZUO MODELの諏佐遙也さんの作品。
今回のパリ展にあわせて、東京展の際と比べて、約3倍の面積に拡大しました。本当に見事な作品です。制作期間は、東京展で制作した部分と合わせるとほぼ1年。
コロナ禍で五輪の延期とともに東京展が1年延期となり、その延びた時間を利用して制作をはじめた国立代々木競技場の周辺敷地模型。制作する範囲、コンタの倍率、道路表現などを細かくシミュレーションしながら決定した日々が懐かしく思い出されましたが、あれから3年。ついにパリの地に。コロナがなかったらなかったかもしれない模型。感慨深いです。
開幕記念ラウンドテーブル「東京オリンピック1964のレガシー ~国立代々木競技場の世界遺産登録に向けて」
また、展覧会の開幕を記念して、パリ日本文化会館の大ホールにてラウンドテーブルが開催されました。
隈研吾(建築家・国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会代表理事)
Bénédicte Gandini(ル・コルビュジエ財団)
宮本洋一(清水建設株式会社代表取締役会長)
丹下憲孝(建築家・丹下都市建築設計会長)
長谷川香(東京藝術大学准教授)
豊川斎赫(千葉大学准教授、本展キュレーター)
モデレーター:山名善之(東京理科大学教授)
国立代々木競技場の世界遺産登録を目指す「GYSC(国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会)」の代表理事である隈研吾によるキーノートスピーチにはじまり、登壇者それぞれの見地から国立代々木競技場の歴史的価値、建設時の挑戦の軌跡などが提示され、会場からも世界遺産登録に向けた課題について質疑が上がり、活発な意見交換が展開されました。総括は、ICOMOS元会長の河野俊行。世界遺産登録審査にとって大きな要素となる「OUV(Outstanding Universal Value)」の叙述。「顕著な普遍的価値」と訳されるところで、何が普遍的であるのか、その価値づけのヒントが、すでに今回のシンポジウムでもいくつも見られたという話でした。
会場はほぼ満席となり、フランスでの日本の建築文化や丹下健三、隈研吾両氏に対する関心の高さがうかがえました。